同じ賃貸物件が何社も掲載されるのはなぜ?仕組みとおとり広告の見分け方を現役営業マンが解説

不動産営業の本音

この記事を書いた人: 現役不動産賃貸仲介営業マン|物件情報を掲載する側の人間です。

この記事でわかること

  • 同じ物件が何社からも掲載されている理由
  • 物件情報がネットに載るまでの流れ
  • おとり広告が生まれてしまう構造
  • 掲載ページだけで確認できること
  • 問い合わせる前に使える、確認のための一言

同じ物件が、何社からも出てくる

SUUMOやHOME’Sで部屋を探していると、まったく同じ物件が、違う不動産会社から何件も出てくることがあります。

しかも会社によって、家賃や初期費用の表示が微妙に違う。

「どれが本当なの?」と思いますよね。

……現役の営業マンとして、正直に書きます。物件情報を掲載する側の人間として。

これは不思議なことでも、おかしなことでもありません。仕組みを知れば、全部説明がつきます。

そして——その仕組みを知っていれば、おとり広告を見分けられるようになります。

物件情報が、ネットに載るまでの流れ

まず、ここを理解してください。皆さんが見ている物件情報は、不動産会社が「自分で作った」ものではありません。

①元付け会社が、募集情報を出す

オーナーや管理会社などから募集を任された会社(元付け)が、仲介会社向けに募集情報を公開します。

ここには、こういう情報が書かれています。

  • 家賃、管理費、その他のランニングコスト
  • 初期費用、退去時にかかる金額
  • 設備の詳細

これが、すべての情報の元になります。

公開される経路はひとつではありません。業者向けのポータルサイト、管理会社独自の業者向けサイト、流通システムなど、いくつかの経路があります。

②客付け業者が、それを元に募集をかける

その情報を見た仲介会社(客付け)が、自社としての募集を作ります。

このとき行うのが、「メンテナンス」「新規募集」と呼ばれる作業です。

  • 成約済みだった部屋の情報を、空室や退去予定に変える
  • 家賃、管理費、入居可能時期などを最新の内容に更新する

つまり、元の情報を自社の掲載用に整える作業です。

③SUUMOやHOME’S、自社サイトに掲載される

メンテナンスが終わると、ようやく一般向けのサイトに出ます。

ここで初めて、皆さんがネットで物件を見られるようになり、問い合わせができるようになります。


同じ物件が何社からも出てくるのは、この②を複数の会社が同時にやっているからです。元の情報が同じなので、当然そうなります。

なぜ、何社も同じ物件を載せるのか

ここからが、お金の話です。

ポータルサイトへの掲載には、コストがかかります

SUUMOやHOME’Sなどへの掲載には、不動産会社側に広告コストがかかります。

つまり、掲載すればするほどコストが増えます。 それでも載せるのは、問い合わせを集めるためです。

成約時に、広告料が支払われることもあります

物件によっては、成約時にオーナーや元付け会社側から「広告料」や「業務委託料」が支払われるケースもあります。

ただし、必ず出るわけではありません。 物件や時期によって、あるものとないものがあります。

結果、反響の取り合いになります

いずれにせよ——仲介会社は、他の掲載業者より1件でも多く問い合わせを取りたい。

同じ物件が10社から掲載されていれば、その10社が問い合わせを奪い合っているということです。

この構造そのものは、悪いことではありません。 ただ、ここに歪みが生まれる余地があるのも事実です。

おとり広告が生まれる2つのパターン

正直に書きます。この競争の中で、実際には申し込めない物件が掲載されていることがあります。

おとり広告は、業界のルールで明確に禁止されています。 景品表示法に関連する「不動産の表示に関する公正競争規約」の第21条で禁止されており、違反した業者には、公正取引協議会から警告や違約金が科されることがあります。

そのうえで、現場では2つのパターンがあります。

①意図的なもの

悪質な業者は、条件をわざと良く見せたり、実際より安い家賃で掲載します。

そして問い合わせや来店があった段階で、こう言います。

「値段が変わってしまいまして……」 「間違って掲載してしまいました……」

そのうえで、別の物件へ誘導します。

最初から、その物件で成約させるつもりがない。 これが典型的なおとり広告です。

②単に更新が遅れているもの

一方で、悪意がないケースもあります。

成約になった物件を「成約済み」に変更するのが遅れてしまう業者です。

物件数が多ければ、更新作業も膨大になります。意図的ではなく、単に追いついていない。 これも実際にあります。

結果として同じように見えますが、性質は違います。 そして——読者側からは、どちらか区別できません。

だから、確認する方法を知っておいてください。

見分け方①:他社の掲載と、どこが違うかを見る

SUUMOやHOME’Sには、他の業者の掲載情報も載っています。

だから、同じ物件を別の会社がどう出しているかを比べられます。

ここで大事なのは、「何が違うのか」を分けて見ることです。

①仲介手数料や独自キャンペーン これは会社ごとに違って当然です。手数料無料、初期費用の割引など、各社の営業方針の話なので、違っていても不自然ではありません。

②家賃・管理費そのもの こちらは、元の情報が同じなら基本的に揃うはずです。

同じ部屋・同じ号室なのに、家賃や管理費そのものが一社だけ明らかに安い場合は、問い合わせる前に最新の条件を確認してください。

更新のタイミングのズレという可能性もありますが、確認する価値はあります。

見分け方②:掲載ページの「取引態様」を見る

問い合わせる前に、掲載ページで確認できることがあります。

物件情報には**「取引態様」**という項目があります。これは、掲載している不動産会社と、その物件のオーナーとの関係を示すものです。

取引態様意味
貸主その会社自身がオーナー
代理オーナーから直接依頼を受けて募集している
仲介(媒介)他社から情報提供を受けて掲載している

「貸主」「代理」なら、その会社が物件の状況を直接把握しています。 情報のズレは起きにくい。

一方、「仲介」の場合は、元付けから情報を受けて掲載しているため、更新のタイミングによってはズレが生じることがあります。

これ自体は普通のことです。 ただ、条件が良すぎると感じたときは、取引態様も見てみてください。

掲載が1社だけのときは、少し注意

同じ物件が複数のサイト・複数の会社から出ているなら、それは情報が広く公開されている物件ということです。

逆に、どこを探しても1社からしか出てこないのに条件が良すぎる場合は、確認する価値があります。

見分け方③:問い合わせた物件の資料が送られてくるか

これが一番分かりやすい判断材料です。

問い合わせをしたのに、その物件の情報を送ってこない。 別の物件の話ばかりされる。

この場合、おとり広告の可能性が高いです。

ただし——別の物件を勧められること自体は、おかしくありません。 条件に合う他の物件を提案するのは、普通の仕事です。

問題は「問い合わせた物件について答えているかどうか」です。 そこをはぐらかされるなら、疑ってください。

【決め手】この一言で確認できます

見分け方を知っていても、確信が持てないことはあります。

そういうときに使える言葉があります。

「管理会社名と、リアプロやレインズで管理会社が掲載している物件情報を送ってください。」

これで、ほぼ判別できます。

なぜこれが効くのか

リアプロやレインズは、不動産会社どうしが物件情報をやり取りするためのサイトです。元付けの管理会社が登録している、大元の情報がここにあります。

つまり——「うちが掲載している情報」ではなく「元の情報」を見せてください、という意味です。

条件を良く見せて掲載している業者は、ここを出せません。 出せば食い違いが分かってしまうからです。

「ありません」と言われた場合

オーナーさんが自主管理している物件の場合、管理会社が存在しません。 その場合は「オーナーさん自主管理のためありません」と言われます。

これは正当な答えです。

ただし——8割の物件は管理会社が管理していて、リアプロやレインズなどに登録されていることが多いです。

変に濁してくる場合は、怪しい業者か、掲載情報が間違っている可能性が高いです。

それでも不安なときの2つの手

①現地での待ち合わせを希望してみる

内見の予約をするときに、「現地で待ち合わせできますか」と聞いてみてください。

実際には案内できない物件なら、現地に行けません。 はぐらかされたり、来店を強く求められたりする場合は、疑う材料になります。

ただし、取引できる物件でも来店を求められることはあります。 鍵の受け取りや契約手続きの都合など、正当な理由もあるので、これだけで断定はできません。

②ポータルサイトに通報する

SUUMOなどには、ユーザーがおとり物件を通報できる仕組みがあります。 物件詳細ページの下部に通報用のフォームが用意されていて、通報後は運営側が事実確認をして対応します。

「おかしい」と思ったときに、泣き寝入りする必要はありません。

ただし、全部が悪質なわけではありません

ここは、はっきり書いておきます。

掲載情報が実際と違っていたからといって、必ずしも悪意があるとは限りません。 前述の通り、単に更新が追いついていないだけのこともあります。

私の会社の場合、募集をかける前に店長や上司に確認してもらい、金額や設備が間違っていればその場で直してから掲載します。 そういう手順を踏んでいる会社もあります。

大事なのは、業界全体を疑うことではなく、目の前の一社を確認できるようになることです。

まとめ

ポイント内容
同じ物件が何社も出る理由元付けの情報を、複数の客付け業者が掲載しているから
掲載のコスト仲介会社が広告費をかけて問い合わせを集めている
成約時の報酬広告料等が支払われるケースもある(必ずではない)
結果反響の取り合いになり、歪みが生まれる余地がある
見分け方①家賃・管理費そのものが一社だけ安いなら確認する
見分け方②掲載ページの「取引態様」を見る
見分け方③問い合わせた物件の資料を送ってくるか
決め手管理会社名と、業者間サイトの掲載情報を求める
最後の手段現地待ち合わせを希望する/ポータルに通報する

この記事の結論は、これだけです。

同じ物件が何社も掲載されていること自体は、怪しくありません。

怪しいかどうかを見るべきなのは、「他社との違い」と「問い合わせ後の対応」です。

掲載が重複しているのは、仕組み上あたりまえのこと。そこを気にするより、問い合わせたときに何が返ってくるかを見てください。

疑い続ける必要はありません。 ただ、確認する言葉をひとつ知っているだけで、無駄足を踏まずに済みます。

問い合わせたのに、その物件の話をしてもらえない。金額の説明が曖昧。そう感じたときに、この記事を思い出してください。

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