この記事を書いた人: 現役不動産賃貸仲介営業マン|退去・入居の現場を毎日見ています。
この記事でわかること
- 退去費用で「払わなくていい項目」5選
- 経年劣化・通常損耗という最強の知識
- 入居時にやっておくべき退去費用対策
- 退去費用を安く抑える具体的な方法
はじめに:その退去費用、本当に払う必要ありますか?
退去時に管理会社から届く精算書を見て、「え、こんなに取られるの?」と驚いた経験はありませんか?
営業マンとして正直に言います。退去費用の中には、本来借主が払う必要のない項目が含まれていることがあります。 知らずに払ってしまう人が多いのが現実です。
この記事では、現場を知る立場から「払わなくていい項目」と「退去費用を抑える方法」をぶっちゃけます。
まず知っておくべき2つの言葉
退去費用の話をする前に、この2つの言葉だけ覚えてください。これを知っているだけで、退去時の交渉力が大きく変わります。
経年劣化(けいねんれっか) 時間の経過とともに自然に傷んでいくこと。日焼け・色あせなど。
通常損耗(つうじょうそんもう) 普通に生活していて避けられない傷みや汚れのこと。家具の設置跡など。
この2つは原則として貸主(大家)負担です。 国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」にも明記されています。借主が負担するのは「故意・過失による損傷」だけが基本です。
そして、もうひとつ重要なこと。「国土交通省のガイドラインを確認しました」と一言伝えるだけで、業者や管理会社の対応が変わることがあります。「この人は知識がある」と思われるだけで、不当な請求がしづらくなるからです。
「原状回復」の本当の意味、知っていますか?
「原状回復=借りた時の状態に戻すこと」と思っていませんか? 実はこれ、間違いです。
国土交通省のガイドラインでは、原状回復とは借主の故意・過失や、通常の使用を超える使い方によって生じた損耗・毀損を復旧することと定義されています。そして、経年変化や通常の使用による損耗の修繕費用は、毎月払っている家賃にすでに含まれているという考え方です。
つまり——
- ❌ 借りた当時のピカピカの状態に戻す費用を払う
- ⭕ 自分の不注意で付けた傷・汚れの分だけ払う
これが正しい理解です。裁判所も同じ考え方で、原状回復とは通常損耗を元に戻すことではなく、借主の故意・過失による劣化の回復を意味すると判断しています。
「新品への交換費用」を請求されたら減額の余地あり
さらに重要なポイントがあります。仮に借主負担の損傷があったとしても、新品に戻す費用を全額負担する必要はありません。
壁紙や設備には「耐用年数」という考え方があり、使用年数が経っているほど価値は下がっています。例えば6年住んだ部屋の壁紙は、耐用年数の考え方ではほぼ価値が残っていません。
それなのに新品への交換費用を満額請求されたら、減額交渉の余地があります。 精算書に「壁紙張替え 全額」のような項目があったら、「耐用年数を考慮した金額ですか?」と確認してみてください。
払わなくていい項目5選
【1】設備の故障
普通に使っていて壊れたエアコンや給湯器などの「設備」と表記されているものは、貸主が負担するべきものです。故意に壊したわけでなければ払う必要はありません。
また、残置物(前の住人が残していったもの)扱いのものは、そもそも退去費用の対象外です。契約書で「設備」か「残置物」かを確認しましょう。
【2】床の日焼けや変色
日差しは基本的に防ぐことができません。フローリングや畳の日焼けは自然現象なので貸主負担です。
【3】壁の黒ずみや変色
冷蔵庫の裏の黒ずみ、白い壁紙の黄ばみ。これらは生活していれば必ず起こるものなので、基本的に貸主負担です。
ただし例外があります。 タバコを部屋で吸っていたことによる黄ばみやニオイは借主負担になります。退去費用を抑えたい方は、部屋での喫煙は控えましょう。
【4】床のへこみ
家具を置いたときにできるへこみは、生活するうえでやむを得ないものなので貸主負担です。
ただし、ピアノなどの楽器や、常識の範囲を超える重さのものによるへこみは借主負担になる可能性があります。
【5】画鋲の穴
カレンダーやポスターを貼るための小さな画鋲の穴はOKです。通常損耗の範囲内とされています。
一方、釘やネジによる大きな穴は借主負担になる可能性が高いです。賃貸物件で壁に何かを取り付けたい時は、画鋲で済む方法を選びましょう。
注意:特約には要注意
ここまで「払わなくていい」と説明してきましたが、ひとつ注意点があります。
契約書に「特約」がある場合、借主負担になる項目が増えていることがあります。 例えば「退去時のハウスクリーニング代は借主負担とする」といった特約は多くの物件に付いています。
退去の前に、契約書と重要事項説明書を必ず読み返してください。 特約に書かれていない費用を請求されていたら、それは交渉の余地があります。
入居時にやっておくべき最強の防御策
これから引っ越す方に、絶対やってほしいことがあります。
入居日に、部屋中の写真を撮っておくこと。
退去時に「この傷は入居時からあった」と主張しても、証拠がなければ認められないことがあります。逆に、日付入りの写真があれば、それだけで請求を退けられます。
撮っておくべき場所:
- 床・壁・天井の傷や汚れ
- 水回り(キッチン・風呂・トイレ・洗面台)
- 建具(ドア・窓・網戸)の状態
- 設備(エアコン・給湯器など)の状態
入居日のうちに撮影して、管理会社にも「入居時からこの傷がありました」と報告しておくと完璧です。
退去時にできる2つの自衛策
①退去立ち会いは、しなくても退去できます
これ、知らない人がほとんどです。退去立ち会いは義務ではありません。立ち会いをしなくても退去はできます。
なぜこれをお伝えするかというと、立ち会いの現場ではその場でサインを強要されたり、うまく言いくるめられたりすることが多いからです。
その場の空気で「修繕費用の確認書」にサインしてしまうと、後から「やっぱり納得できない」と思っても覆すのが難しくなります。業者側もそれをわかっていて、その場での即決を求めてきます。
だから私は、立ち会いをしないことをおすすめします。 鍵の返却は郵送などで対応できる場合が多いので、管理会社に確認してみてください。
どうしても立ち会いが必要な場合は、その場では絶対にサインしないこと。「持ち帰って確認します」と言えば大丈夫です。納得できない項目への署名を強制する権利は相手にはありません。
②やり取りはメールなど証拠が残る方法で
退去費用の連絡や交渉は、電話ではなくメールなど記録が残る方法で行いましょう。
「言った・言わない」のトラブルになった時、メールの文面はそのまま証拠になります。電話で連絡が来ても「内容をメールで送ってください」とお願いすればOKです。
どうしても会って話す必要がある場合は、できれば録音しておきましょう。 スマホのボイスメモで十分です。録音があるとわかっているだけで、相手も無茶な要求がしづらくなります。
退去費用をさらに抑える2つの方法
①ハウスクリーニングは自分で手配する方が安いことも
特約でハウスクリーニング代が借主負担になっている場合でも、管理会社指定の業者より、自分で専門店に依頼した方が安く済むケースがあります。
管理会社経由だと中間マージンが乗っていることがあるからです。退去前に一度見積もりを取って比較してみてください。
お引越し前後の空室清掃は、引越しハウスクリーニング専門店・ミガクる②エアコンクリーニングも事前にやっておくと交渉材料に
エアコンの汚れを理由に清掃費用を請求されるケースもあります。事前に専門店でクリーニングしておけば、「清掃済みです」と伝えられて交渉材料になります。 こちらも管理会社指定の業者より安く済む可能性があります。
専門店のお掃除品質、エアコンクリーニング清風まとめ:知識があるだけで退去費用は変わる
| 項目 | 負担者 |
|---|---|
| 設備の自然故障 | 貸主 |
| 床の日焼け・変色 | 貸主 |
| 壁の黒ずみ・変色 | 貸主(喫煙による黄ばみは借主) |
| 家具による床のへこみ | 貸主(楽器など重量物は借主の可能性) |
| 画鋲の穴 | 貸主(釘・ネジの大穴は借主の可能性) |
- 経年劣化・通常損耗は原則貸主負担
- 原状回復=「借りた時の状態に戻すこと」ではない
- 新品への交換費用を請求されたら減額交渉の余地あり
- 国土交通省のガイドラインの存在を伝えるだけで対応が変わることも
- 特約の内容は契約書と重要事項説明書で必ず確認
- 入居時の写真撮影が最強の防御策
- 退去立ち会いは義務ではない。する場合もその場でサインしない
- やり取りはメールなど証拠が残る方法で。対面なら録音を
- クリーニングは自分で手配した方が安い場合がある
退去費用は「知っているか知らないか」で数万円変わることがあります。この記事の内容を頭に入れて、損のない退去をしてください。
そして退去が決まったら、次は引っ越しの手配です。引っ越し費用も複数社の比較で大きく変わります。
ネットで頼むと安くなる!!引越し屋この記事が役に立ったら、引っ越し予定のお友達にもシェアしてください。
