この記事を書いた人: 現役不動産賃貸仲介営業マン|生活保護を受給されている方のお部屋探しも、ご案内しています。
※この記事では、制度に関する部分と、現場での経験に基づく部分を分けて書いています。制度の運用は自治体によって異なる場合があるため、実際の手続きは必ずケースワーカー(担当職員)にご確認ください。
結論:借りられます。ただし、探し方を変えたほうがいいことがあります
先に、この記事の答えを書きます。
生活保護を受給していても、賃貸は借りられます。 実際に契約されている方は大勢います。
ただし——受給していない方と比べると、審査に時間がかかったり、通らないことがあるのも事実です。
そして大事なのは、通らなかったからといって、方法がないわけではないということ。
一般の賃貸に正面から申し込む以外にも、ルートがあります。 先に、そこから書きます。

この記事でわかること
- 一般の賃貸で断られ続けたときの4つの対策
- 審査のどこで止まっているのか
- オーナー側から見たときの、意外なメリット
- 物件探しで一番大変なポイント
- 相談前に確認しておくべき3つのこと
- 引っ越し費用について誤解されやすいこと
【対策】正面が難しいときの4つのルート
何件も申し込んで断られているなら、探し方そのものを変えてください。
①保証会社が違う物件を探す
保証会社によって、審査の基準は異なります。
同じ条件でも、別の保証会社を利用できる物件では結果が変わることがあります。
仲介会社に「別の保証会社を使える物件はありますか」と聞いてみてください。 これだけで候補が変わることがあります。
②代理納付を使えるか確認する
家賃を、福祉事務所が大家さんに直接支払う仕組みです。生活保護法第37条の2に定められています。
オーナーが心配しているのが「家賃の滞納」なら、これが直接の答えになります。 本人を経由しないので、住宅扶助が確実に家賃に充てられるからです。
令和2年4月からは、次の場合に原則として代理納付が適用されることになっています。
- 家賃等を滞納している場合
- 公営住宅に入居する場合
- 次に説明するセーフティネット住宅に、新たに入居する場合
(※ただし、家主が希望しない場合や、住宅扶助費が満額支給されない場合などは対象外とされています)
ケースワーカーに「代理納付は使えますか」と聞いてみてください。

③セーフティネット住宅を探す
住宅確保要配慮者の入居を拒まない住宅として、あらかじめ登録されている賃貸物件です。低額所得者も対象に含まれます。
「断られるのでは」と身構えながら問い合わせる必要がありません。 最初から受け入れる前提で登録されている物件だからです。
専用の検索サイトから探せます。物件数には地域差がありますが、選択肢として必ず知っておいてください。
④居住支援法人・ケースワーカーに相談する
住まい探しを支援する仕組みがあります。
居住支援法人は、家賃債務保証、入居相談、入居後の生活支援などを行う法人として登録されています。
個人で不動産会社を何件も回るより、支援に繋がったほうが早いケースがあります。 まずはケースワーカーに相談して、地域の居住支援の窓口を教えてもらってください。
審査は、どこで止まっているのか
ここからは、現場で見ている話です。
賃貸の審査には、確認する相手が複数います。 オーナー(大家さん)、管理会社、そして保証会社。
生活保護の場合、このどこで止まることもあります。

「保証会社の審査次第です」と言われたら
現場でよく言われるのが、この言葉です。
オーナー側では大きな問題がなく、保証会社の結果が重要になっているケースを指すことがあります。
つまり、この段階まで来ていれば、可能性はあります。 オーナーが懸念しているのが家賃の滞納であれば、その対応をしてくれる保証会社が付くなら問題ない、という判断です。
ただし——審査の順序は管理会社や物件によって違います。 「保証会社次第」という言葉が必ず同じ意味とは限らないので、具体的に何を待っているのかを確認してください。
慎重に確認されるケースもあります
受給の理由や状況によっては、確認事項が増えることがあります。
受給理由そのものだけでなく、入居後の支援体制や緊急連絡先などを含めて、慎重に確認されるケースがあります。
これは制度上の決まりではなく、個々のオーナーや管理会社の判断です。
もし確認が長引いたり、断られることが続いたりしても、あなたに問題があるわけではありません。 そういうときこそ、前述の4つのルートを使ってください。
過去に家賃の滞納がある場合
保証会社が確認するのは支払い能力です。 滞納の履歴があると、審査に影響することがあります。
この場合こそ、代理納付が有効な材料になります。 本人を経由せず家賃が支払われるので、滞納のリスクそのものが下がるからです。

実は、オーナーにとってメリットもあります
ここは、知っておいてほしい視点です。
「生活保護だから敬遠される」とだけ思っていると、必要以上に萎縮してしまいます。 でも、オーナー側から見ると、プラスに働く面もあります。
家賃が住宅扶助として、上限額の範囲内で支払われる。 つまり——失業や収入減で家賃が払えなくなる、という種類のリスクは低いということです。
一般の入居者は、収入が減れば家賃の支払いが不安定になります。その点では、むしろ読みやすいとも言えます。
さらに代理納付を使えば、家賃が本人を経由せず直接支払われます。 オーナーが心配している部分を、制度で埋められるわけです。
だから、萎縮せずに相談してください。 断られることがあるのは事実ですが、受け入れているオーナーも確実にいます。
一番大変なのは、物件を見つけるところです
審査の話をしてきましたが、現場で一番時間がかかるのは、実は物件探しです。
住宅扶助には上限があります。 上限額は、お住まいの地域の級地と、世帯の人数によって決まります。
札幌市の単身世帯であれば、おおむね3万円台が上限とされています。ただし金額は改定されることがあるため、必ずケースワーカーに確認してください。
上限内に収まる物件は、当然ながら限られます。 そのうえで、立地や間取り、設備の希望を全部叶えようとすると、候補がゼロになってしまいます。

だから、条件に優先順位をつけてください
「全部叶う物件」を探すのではなく、「何を優先するか」を決めてください。
- 通院先や役所へのアクセス
- 買い物のしやすさ
- 間取りや広さ
- 築年数
- 設備(エアコン、都市ガスなど)
この中で、絶対に譲れないものを1つか2つに絞る。 それだけで、探せる範囲が現実的になります。
優先順位が決まっていれば、納得できる物件にたどり着けます。 逆に、決まっていないと何件見ても決まりません。
相談前に、確認しておいてほしい3つのこと
不動産会社に相談する前に、ケースワーカーに確認しておいてください。 この3つが分かっていると、話が一気に早くなります。
①住宅扶助の上限額
いくらまでの家賃が対象になるか。これが分からないと、物件を探し始められません。
②契約金(初期費用)は支給対象になるか
敷金・礼金・仲介手数料・火災保険料・保証料などは、条件を満たせば住宅扶助として支給されることがあります。 ただし上限額が定められており、合算で管理されます。
③引っ越し費用は支給対象になるか
ここが、一番誤解されやすいところです。
引っ越し費用は、厚生労働省の通知に列挙された事情に該当し、福祉事務所が必要と認めた場合に支給されます。
たとえば、現在より家賃の低い住居に転居する場合や、立ち退きを求められた場合などが挙げられています。
逆に、自己都合による引っ越し(もっと広い部屋に住みたい、新しい物件がいいなど)は、原則として支給の対象外です。
「引っ越したいから費用を出してもらえる」わけではありません。 ここを誤解したまま物件を探し始めると、決まった後で振り出しに戻ります。
私がお客様に条件をお聞きするときも、この3つは必ず確認しています。

仲介会社には、正直に話してください
これは、お願いに近いです。
受給していることも、事情も、隠さずに話してください。
理由は単純で、隠されると、通せる可能性のある物件も提案できないからです。
- どの保証会社を使う物件なら可能性があるか
- 生活保護の受け入れ実績があるオーナーの物件はどれか
- 代理納付に対応してもらえるか
これらを踏まえて探すには、最初から事情が分かっている必要があります。 後から分かって振り出しに戻るより、最初に全部伝えたほうが、結果的に早く決まります。
事情が複数あるなら、全部伝えてください
受給に至った事情が一つとは限りません。
体調のこと、就労の状況、家庭の事情。複数が重なって今の状況になっている方が多いです。
聞かれたときに一つだけ答えてしまう人がいますが、思い当たることは全部伝えてください。 伝え漏れがあると、それだけで判断されてしまうことがあります。
部屋探しの流れ
実際に進めるときは、こういう順番になります。
- ケースワーカーに、扶助の上限額・契約金・引っ越し費用の支給要件を確認
- 条件に優先順位をつける
- 不動産会社に相談(事情は最初に全部伝える)
- 物件を探す・内見する
- 申し込み → 審査と役所への確認を同時に進める
- 審査が通れば、通常と同じ流れで契約
審査と役所の確認を同時に進めるのがポイントです。 どちらかを待ってからもう一方、だと時間がかかりすぎます。

よくある質問
Q. 生活保護だと、賃貸は借りられないのですか?
A. 借りられます。ただし審査に時間がかかることがあり、物件も住宅扶助の上限内に限られます。
Q. 生活保護だと、オーナーに敬遠されますか?
A. 断られることがあるのは事実です。ただし家賃が住宅扶助として支払われるため、収入減による滞納リスクは低いという見方もあります。代理納付を使えば、その安心感はさらに高まります。受け入れているオーナーは確実にいます。
Q. 生活保護であることを隠して申し込めますか?
A. おすすめしません。仲介会社に事情が伝わっていないと、可能性のある物件を提案できません。最初に正直に伝えてください。
Q. 代理納付とは何ですか?
A. 家賃を福祉事務所が大家さんに直接支払う仕組みです(生活保護法第37条の2)。滞納を心配するオーナーにとって安心材料になります。
Q. 引っ越し費用は必ず出ますか?
A. いいえ。厚生労働省の通知に列挙された事情に該当し、福祉事務所が必要と認めた場合に限られます。 自己都合の転居は原則として対象外です。
Q. 何件も断られています。どうすればいいですか?
A. 探し方を変えてください。セーフティネット住宅、居住支援法人への相談、別の保証会社を使う物件、代理納付。 正面以外のルートがあります。
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 借りられるか | 借りられます。ただし審査に時間がかかることがある |
| 4つの対策 | 別の保証会社/代理納付/セーフティネット住宅/居住支援法人 |
| 一番大変なところ | 住宅扶助の上限内で物件を見つけること |
| 事前に確認すること | 扶助の上限額/契約金/引っ越し費用の支給要件 |
| 仲介会社には | 事情を最初に全部伝える |
| 誤解しやすい点 | 自己都合の引っ越しは費用が支給されないことがある |
「生活保護だから無理」ではありません。 ただ、一般の方と同じ探し方をすると、時間だけがかかることがあります。
条件に優先順位をつけて、事情を正直に伝えて、正面が難しければ別のルートを使う。 この3つで、道は開けます。
そして——ひとりで何十件も断られ続ける必要はありません。 支援する仕組みがあります。まずはケースワーカーに相談してみてください。
この記事が役に立ったら、同じ状況で困っている方にも届けてください。

